旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設を探検する

一人歩き探検旅

国指定の重要文化財が、こんな近くにあるとは知りませんでした。

と言うわけで、今日は「旧三河島汚水処分場喞筒場施設」に来ました。

ポンプを漢字で書くとこの「喞筒」らしいのですが、「そくとう」と読みます。当て字ですね。ポンプはもともと中世オランダ語でpompe、ドイツ語でpumpeが語源のようです。ついでに英語ではpump。

いずれも「ポンプ」と発音するのでしょうが、どうでもいい雑学です。外来語のポンプで十分にイメージできますよね。でも、漢字検定なんかに出てきそうではあります。良くこんな難しい漢字を当てたものです。

それでは、行ってみましょう!、と進みたいところですが、、、

横道に逸れかけたついでに、最近、重要文化財ってなに?、遺跡って、史跡ってなに?、と言う疑問が、そういったところに行くことも多くなり、ポンプだけに(笑)沸き上がってきました。

それで、ちょっと整理してみました。ガマンしてお読みいただければ(^_-)-☆

重要文化財とか国宝とか国の史跡とか…?

重要文化財の定義

重要文化財とは、建造物や美術工芸品等の有形文化財のうち、歴史上、芸術上価値の高いものを、文化財保護法に基づき、国(文部科学大臣)が指定する文化財のこと。

Wikipedia

どうもこの「重要」「有形」という言葉がミソのようですね。

似通った用語で、「重要無形文化財」「重要無形民俗文化財」がありますが、これは別のカテゴリーらしいです。勉強になりますね。

同じように「県指定重要文化財」とか「市指定重要文化財」とかいうのも、地方自治体が条例で定めたものなので違うカテゴリーです。

それから、ご存じ「世界遺産」は、ユネスコが登録する世界規模の制度ですね。世界遺産についてはまた別の機会にレポートしましょう。

文化財と重要文化財

一般に「文化財」というのは、国や地方自治体の指定等の有無に関わらず、かつ、「有形・無形」のすべての文化的遺産を指す用語だそうです。

文化財保護法上の分類

  • 有形文化財…この中から重要文化財が指定され、さらに国宝が指定される
  • 無形文化財…この中から重要無形文化財が指定される(別のカテゴリーとして)
  • 民族文化財(有形・無形)…この中から重要無形民俗文化財が指定される(別のカテゴリーとして)
  • 記念物(史跡・名勝・天然)…この中から国が指定するものを、例えば「国の史跡」と呼ぶ
  • 文化的景観…この中から重要文化的景観が指定される(地方自治体の申出で文化庁が選定)
  • 伝統的建造物群…この中から重要伝統的建造物群保存地区が指定される(地方自治体の申出で文化庁が選定)

重要文化財と国宝について

前項で、有形文化財の中から重要文化財が指定され、その中から国宝が指定されると記述しました。

有形文化財 > 重要文化財 > 国宝  という数でいう相関関係はこれですね。

ここで「国宝」の概念ですが、文化財保護法施行の1950年以前と以後ではちょっと違うようです。

  • 1950年以前… 重要文化財と国宝の区別はなく、国指定の有形文化財(美術工芸品および建造物)は、すべて「国宝」と称されていた
  • 1950年以後… それ以前の国宝(あえて旧国宝と称す)をすべて重要文化財に指定し、そのうちから一定数をあらためて国宝(あえて新国宝と称す)に指定した

ですから、神社仏閣なんかに行くと、重要文化財(旧国宝)といったような表記やパンフレットをみかけることがあると思います。こういうことなんですね。

「うちの〇〇は昔、国宝だったんだが戦後に格下げされてね」という話を聞いたことがありますが、これは制度上の誤解からくるものだったということです。

ちなみに、文化財保護法上の国宝は、2023年1月1日現在で1132件あります。

なお、良く耳にする「人間国宝」の国宝は、「重要無形文化財の保持者として各個認定された人物を指す通称」でなので、ここでいう「国宝」とは制度上の概念がまったく違います。念のため。

それから、最近「日本遺産」なる言葉を聞くことがありませんか?

文化庁が推し進める、少しゆる~い感じの概念ですが、きっと「観光立国」を強く意識したものだと思います。

世界遺産登録や文化財指定は、いずれも登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い、保護を担保することを目的とするものです。一方で日本遺産は、既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく、地域に点在する遺産を「面」として活用し、発信することで、地域活性化を図ることを目的としている点に違いがあります。

日本遺産ポータルサイト|文化庁が認定する日本の文化・伝統 (bunka.go.jp)

ざっくりこんな感じですが、ご理解いただけましたでしょうか。

これに、経済産業省が主管する「近代化産業遺産」や、文化庁の「近代化遺産」などが登場してきます。これ以上勉強すると、ドツボにハマりますので、この辺にしておきましょう(笑)

それで、お解りになった通り、「旧三河島汚水処分場喞筒場施設」は正真正銘の国の重要文化財、つまり国宝一歩手前(?)なんですね。

それではお待たせしました。いよいよ、先に進みましょう。

旧三河島汚水処分場喞筒場施設とは

公式サイトから引用させていただきました。

旧三河島汚水処分場喞筒場施設は、隅田川中流に位置する旧下水処理場施設で、東京市区改正事業の一環として、東京市技師米元晋一を中心として建設が進められ、1922(大正11)年3月26日に運用を開始しました。
本施設は、わが国最初の近代下水処理場である旧三河島汚水処分場の代表的遺構として、高い歴史的価値が認められることから、2007(平成19)年12月4日に下水道分野の遺構では初めて国の重要文化財(建造物)に指定されました。
阻水扉室、沈砂池など一連の建造物が旧態を保持しつつまとめて残っており、近代下水処理場喞筒場施設の構成を知る上でも重要な文化財となっています。

旧施設の略歴

  • 大正03年(1914) 建設工事着工
  • 大正11年(1922) 運転を開始
  • 大正12年(1923) 関東大震災に遭うも、大きな被害を受けず
  • 昭和37年(1962) 沈砂池に蓋を施す(周辺宅地開発による臭気対策)
  • 平成11年(1999) 稼働を停止(同じ敷地内の新施設に移行)
  • 平成16年(2004) 下水処理場の名称を「水再生センター」に変更
  • 平成19年(2007) 国の重要文化財に指定(下水道分野の遺構として初)
  • 平成25年(2013) 一般公開を開始

東京都下水道局のサイトはコチラから

公式見学予約受付サイトはコチラから

下水処理場(水再生センター)とは

下水処理場(げすいしょりじょう)とは、下水道の汚水を浄化し、河川、湖沼または海へ放流する施設のことである。日本の下水道法では、「終末処理場」と呼称しており、「下水を最終的に処理して河川その他の公共の水域又は海域に放流するために下水道の施設として設けられる処理施設及びこれを補完する施設」と定義している。浄化センター、水再生センター、水処理センターなどと呼ばれることもある。

Wikipedia

下水処理場の歴史と清流の復活

いわゆる汚水は、そのまま河川に垂れ流すと、環境が汚染されてしまいます。過去には世界各地で病原菌の被害が起きました。いまは環境破壊と言う言葉で括られていますが…。

この日本でも、明治に入って、外国からコレラ菌が持ち込まれ、明治10年代は全国で猛威をふるっていました。下水道築造は主にこのコレラ菌対策で、喫緊の課題となりました。

ところが、明治政府には財政的な余裕はありません。とりあえず下水よりも上水道の整備を優先せざるを得なかったようです。

ですから、下水道の整備は明治の後年まで待たなくてはなりません。そして大正に入り、この西洋からの文明で導入されたのが、近代的な下水処理施設「三河島汚水処分場喞筒場」だったわけですね。

第二次世界大戦では、東京の下水道施設はそれほど被害を受けなかったそうです。

それが、戦後の高度成長期に入ると、キャパが大きく超え、隅田川や多摩川など河川の生活排水による汚染が深刻な状況になりました。

そこで、都内各地に下水処理施設が建設されるようになるわけです。

ちなみに、それまで「下水処理場」として呼称されていた施設は、平成16年に「水再生センター」と名前を変えました。各地に多くの施設を造るためには、下水処理場というイメージ払拭が必要だったわけですね。

東京都下水道局公式サイトによれば、東京都内にはこのような下水処理場(水再生センター)が、全部で20カ所あるようです。

その中から、少しだけ抜粋引用してみました。

  • 落合水再生センター…処理した水は神田川に放流しています。また、一部は再生水として西新宿や中野坂上地区のビルのトイレ用水や城南三河川の清流復活事業に活用しています。
  • 中野水再生センター…処理した水は妙正寺川に放流しています。また、その一部は砂ろ過してセンター内で機械の洗浄・冷却やトイレ用水に使用しています。
  • 多摩川上流水再生センター…処理した水は多摩川に放流するとともに、一部をろ過してセンター内の機械の洗浄・冷却やトイレ用水などに使用しています。また、昔の清流の姿を取り戻すため、砂ろ過とオゾン処理を行って、野火止用水、玉川上水、千川上水に送水しています。
  • 三河島水再生センター…処理した水は隅田川に放流しています。また、一部は東尾久浄化センターでろ過し、さらにきれいにして隅田川に放流するほか、三河島水再生センター内の機械の洗浄・冷却などに使用しています。

玉川上水と神田川

管理人は最近、玉川上水と神田川をそれぞれ、歩いて辿る旅を挙行しました。

その中で、下水処理場で再生処理された水が川に注がれ、生き物が生息できる清流を作り出す、ということを学びました。

管理人が旅した玉川上水と神田川にも、この下水処理施設から放たれた清流が流入しているわけです。その模様は、YouTube動画にアップしていますので、ぜひご覧下さい。

玉川上水を辿る旅はコチラ

神田川を辿る旅はコチラ

いよいよ入場

スタート地点はこの駅です。歩いても10分くらい。都電に乗ってみたい方は一駅先の荒川二丁目停留所まで乗ってください。

三河島水再生センターの案内板を右に回り込んでいくと正門に到着します。

地下下水道の暗渠の様子です。

さて、ここからはYouTube動画にアップしていますので、そちらをぜひご覧下さい。

YouTube動画はコチラ

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