水郷の町佐原から香取神宮を目指して

一人歩き探検旅

先日は近くの鹿島神宮の白馬祭をレポートしましたが、今日は水郷の町佐原を巡ってから、香取神宮を訪ねます。距離があるところはレンタサイクルでショートカットします。

平安時代以降近年まで、社号を「神宮」と名乗れるのは伊勢神宮、鹿島神宮、香取神宮の三つだったそうです。また、この地方では鹿島神宮、茨城県神栖市の息栖(いきす)神社を合わせて東国三社と言われています。

しかも、香取神社と言われる神社が関東地方中心に全国約400社あるのですが、その総本社が香取神宮ときていますから、生半可なところではありません。

香取神宮と香取神社はいづれも「経津主神(ふつぬしのかみ)」を祀っています。香取大明神とも呼ばれます。鹿島神宮と同じく中世時代、東北の蝦夷(えぞ)を抑えるためにこの地に置かれたと言われています。

一方、佐原は小江戸と言われる町並みが残り、関東では川越とともに人気のスポットになっています。香取神宮の社領として発展し、のち水運の商業都市としても発展した町といえるでしょう。

また、日本地図を作った伊能忠敬が、婿に入って名主となり、生活の拠点としたところでもあります。伊能忠敬と言えばもう教科書にも登場する超有名人ですから、詳しく述べることもありませんが、伊能忠敬の旧宅(国指定史跡)を中心に、近年になって街並みが整備され、文化庁の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されているんですね。

佐原と香取神宮について、もう少し勉強してみましょう。

佐原について

下記の引用の通り、佐原市は現在存在しません。市町村合併により香取市の一部になっています。

佐原市(さわらし)は、千葉県の北東部に存在した市。2006年3月27日に香取郡栗源町、小見川町、山田町と合併し、香取市となった。古くから水郷の町として栄え、市街地の小野川沿いには小江戸とも呼ばれる当時の町並みが残っている。また伊能忠敬の養子婿先の地でもあり、地図の町としても有名である。利根川を挟んで茨城県と接しており、東京から70km圏、千葉市から50km圏にあり、成田国際空港から15km圏に位置している。

佐原市 – Wikipedia

飛鳥時代に遡ると、佐原は下総国の香取郡、海上郡に属していて、香取神宮の神郡(所領・社領)となっていたようです。鎌倉時代になると、香取神宮と大戸地区に荘園ができ、香取神宮の付近は門前町としてひらけたようです。

香取神宮と佐原は一体として栄えたようですね。確かに歩いても直線で起伏もなく、簡単に往復できる距離ですから(歩いても片道3、4キロほど)、佐原の住民は香取神宮とのつながりを深く持っていたのでしょう。

また、300年の歴史を誇る「佐原の大祭」も有名で、秋祭りに使われる山車はユネスコ無形文化遺産に登録されています。

香取神宮について

千葉県北東部、利根川下流右岸の「亀甲山(かめがせやま)」と称される丘陵上に鎮座する。日本神話で大国主の国譲りの際に活躍する経津主神(フツヌシ)を祭神とすることで知られる、全国でも有数の古社である。

古くは朝廷から蝦夷に対する平定神として、また藤原氏から氏神の一社として崇敬された。その神威は中世から武家の世となって以後も続き、歴代の武家政権からは武神として崇敬された。現在も武道分野からの信仰が篤い神社である。

文化財としては、中国唐代の海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)が国宝に指定されている。建造物では江戸時代の本殿・楼門、美術工芸品では平安時代の鏡、中世の古瀬戸狛犬が国の重要文化財に指定されており、その他にも多くの文化財を現代に伝えている。

香取神宮 – Wikipedia

宝物殿が修復中のため観覧できないので、観られるのは建造物だけですが、本殿や拝殿は壮麗で見ごたえがあります。鹿島神宮ほど広くありませんから、コンパクトに境内を散策することができます。

重要伝統的建造物群保存地区とは

昭和50年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群保存地区の制度が発足し,城下町,宿場町,門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになりました。市町村は,伝統的建造物群保存地区を決定し,地区内の保存事業を計画的に進めるため,保存条例に基づき保存活用計画を定めます。国は市町村からの申出を受けて,我が国にとって価値が高いと判断したものを重要伝統的建造物群保存地区に選定します。

伝統的建造物群保存地区 | 文化庁 (bunka.go.jp)

国(文化庁)が、市町村から対象地区の申出を受けて、その中から特に価値が高いものを「重要伝統的建造物群保存地区」に選定するというものです。

登録有形文化財の中から重要文化財を指定するようなものですね。

令和5年12月15日現在、「重要~」に選定されているのは全国で105市町村127地区あるそうです。そのうち関東地方(一都六県)には6地区あります。

  • 桜川市真壁(茨城県)… 戦国時代の真壁城、江戸時代の笠間藩陣屋を中心に栄える
  • 栃木市嘉右衛門町(栃木県)… 日光例幣使街道(東照宮への勅使の道)で栄える
  • 桐生市桐生新町(群馬県)… 絹織物業を中心に発展 江戸後期から昭和初期の主屋や土蔵が残る
  • 中之条町六合赤岩(群馬県)… 地方の農村景観 切妻造平入総二階建てが多く残る
  • 川越市川越(埼玉県)… 上杉、北条氏の城下町 江戸時代初期に繁栄
  • 香取市佐原(千葉県)… 香取神宮の社領として栄え、河港商業都市としても栄える

全国に127地区あるのに関東には6つしかないと言うのは、ちょっと寂しいですね。しかも東京都はなんとゼロ件です。開発優先にしてきたツケがこういうことなのでしょうか。

都道府県別の上位は、石川県は8つ、長野県と京都府が7つずつ、岐阜県と兵庫県が6つずつになりました。

四国のお遍路を歩くと、ところどころに伝統的な建物が並ぶ遍路道を見かけます。こういった地方では、意図して残しているというよりも、新しく開発したり建て替えるおカネ(経済力)がなかったという現実、先の大戦での空襲、大震災の有無なども要因としてはあるようです。

ちなみに、その四国からは9つ選定されています。

伝統的建造物の保存と人口減少による過疎化は表裏一体のもので、難しいことですが、文化庁による有効な対策を切に祈るばかりです!(^^)!

ユネスコ無形文化遺産

無形文化遺産(むけいぶんかいさん、Intangible Cultural Heritage)は、民俗文化財、フォークロア、口承伝統などの無形文化財を保護対象とした、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の事業の一つ。2006年に発効した無形文化遺産の保護に関する条約(以下、無形文化遺産条約)に基づく。無形文化遺産に対して、ユネスコの世界遺産は建築物など有形文化財を対象とする。関係して2001年から3回行われた傑作宣言による90件を引き継いて含まれる。

これまでに対象とされた無形文化遺産は、各国の音楽、舞踏、祭り、儀式のほか、インドのヨーガ(2016年)、日本の和紙(2014年)、和食(2013年)など伝統習慣、工芸など多岐にわたる。

無形文化遺産 – Wikipedia

佐原の山車が登録されているのは、ユネスコ無形文化遺産のうち「山・鉾・屋台行事」の日本の祭りジャンルです。このジャンルには全国で18府県/33件が登録されています。

有名どころでは、京都祇園祭の山鉾行事、博多山笠祇園祭、高山祭の屋台行事などですから、選ばれればいかに名誉なことかがわかります。

関東(一都六県)には6件あります。挙げると以下の通りです。

  • 日立風流物(茨城県)
  • 烏山の山あげ行事(栃木県)
  • 鹿沼今宮神社祭の屋台行事(栃木県)
  • 秩父祭の屋台行事と神楽(埼玉県)
  • 川越氷川祭の山車行事(埼玉県)
  • 佐原の山車行事(千葉県)

ユネスコは世界的な評価基準ですが、日本国内には「日本遺産」と言う括りもあります。少しややこしいですが、いずれも人間の生きてきた遺産を大切にするという点では、みんな同じです。

今日の見どころ

  • 忠敬橋を中心に伸びる小野川沿いの街並み(重要伝統的建造物群保存地区)
  • 伊能忠敬記念館内の資料(国宝指定)
  • 伊能忠敬旧宅
  • 水郷佐原山車会館の山車(ユネスコ文化遺産)
  • 関東厄除け三大師の観福寺
  • 香取神宮の楼門、本殿(国指定重要文化財)
  • 香取神宮樹齢一千年以上の御神木
  • 香取神宮要石と奥宮

要石

奥宮

香取神宮宝物殿は現在修復中のため観覧できません。

アクセス

JR成田線佐原駅を下車して徒歩で佐原の町を散策しましょう。

香取神宮までは少し距離(片道約4キロ)があります。土、日曜日は佐原駅からバスが何本も出ていますが、平日は少ないようです。天気が良ければレンタサイクルがおススメ。ほとんど道は平坦です。

それではマイYouTube動画でご覧下さい。

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